<女子美術大学大学院美術研究科 修士作品・論文集 掲載論文>
私は支持体に描いた空や地面を背景に、人々や動物など様々なキャラクターを切り絵として配置した作品を制作してきましたが、2009年の春にオーストラリアへ短期留学したことをきっかけに、支持体を離れて壁に直接切り絵を貼りつけるという試みをするようになりました。
今にも動き出しそうな「生きている絵画」を目指して見出した「切り絵を画面に配置する」というコラージュ絵画が、支持体を離れる事・離れようとする事によって、更にいきいきと命を宿したようで、遠くの場所へも描いたみんなの笑い声がとどくような気がしています。
私は笑っている人がとても好きです。
心がほっとして、安心します。
絵の中の人はいつもにこにこ笑って、私が生んだ世界を楽しんでいます。
「現実世界では色々なことがあるけれど、これは絵なんだからいいじゃないか。
絵の中では空も飛べるし、魔法使いにもなれる。」
そういう気持ちで描いています。
私にとって絵を描くことは、夢を叶えることなのだと思います。
もう一つ、人間はデータをどんどん貯めて機能するコンピュータよりも、ある時期に明るく咲いて土に還る花に近いという思いが心にあります。
「この時間がずっと続きますように」と願うけれど叶わない、本当に嬉しくて楽しかった事を残せるように、切り取って貼ることがもたらす表現の可能性を追求しながら、これからも制作していきたいです。
2010年3月